日本高齢者虐待防止センター電話相談

2011年11月17日木曜日

施設虐待を考える 日本高齢者虐待防止センター ニューズレター No19

JCPEA(日本高齢者虐待防止センター)ニューズレター 2011年11月号

施設虐待を考える

副田あけみ(関東学院大学)

先日、ある新聞社の記者さんから、電話取材を受けました。施設虐待は、なぜ夜間に起きるのか、という質問でした。実際には、福祉施設ではなく病院で起きた事件で、女性職員が高齢者を叩いた場面を監視カメラが写していた、というものでした。

その事件が起きた病院は、日ごろから施設虐待にかんする研修を行っており、病院長は、「これ以上(防止策を)やるとしたら、監視カメラを増やすしかない」というようなことを言っていたそうです。これを聞いて「ええ??」と言ってしまいました。

施設職員による虐待の場合、支援対象である認知症の高齢者が何か癪に障ることを言ったからとか、面倒をかけたから、カットなって、という衝動的な暴力行為という例はさほど多くないのではないかと思います。

家族とは異なり、職員は、日ごろ、高齢者と情緒的に親密な関係にあるわけではないので、つい感情が爆発してしまうということはあまりない。エイジズム(高齢者差別や侮蔑)の態度・行動を採る職員は論外ですが、それを除けば、職場で孤立していたり、孤独な職員が、ストレス発散をもっとも弱い高齢者に向けて行ってしまった、ということが多いのではないでしょうか。

日ごろから同僚や上司と円滑なコミュニケーションをとることができない、自分のケアの仕方や高齢者への接し方がこれでいいと思っているわけではないけれども、他人から注意されると素直に聞くことができない。そうなると、周囲の人々も「大丈夫かなあ」と不安に思っていても、声掛けや注意を控えるようになってしまう。そうなると、当人はますます孤立し、ストレスをため込んでしまいかねない。そして、つい、、、

では、適切とは思えない態度やケアの方法について、同僚や上司はどうやって注意すればよいのでしょう?

「あの人のケアはちょっとねえ」と言ってしまいそうな人にも、「あら、この点はまあまあじゃない?」「悪くないね」と思える点はあるはず。日ごろから、そうした点を意識して探すようにし、見つけたときには、その場で、あるいは、後から「よく気づいたね」とか、「そのやり方はどうやってみつけたの?」「私もやってみようかな」といった直接的、間接的に肯定的な評価を行う。こうした声掛けは、コミュニケーションを促すはずです。

こうした職員同士、比較的円滑なコミュニケーションが行われている職場ならば、すべてとはいいませんが、かなりの不適切な介護や虐待を未然に防げるのではないでしょうか?