日本高齢者虐待防止センター電話相談

2011年6月1日水曜日

日本高齢者虐待防止センター  ニューズレター No15

JCPEAニューズレター 2011年6月号

2011年度は、3月11日に発生した未曾有の震災と原発事故のなか、始まりました。震災で犠牲になられた方の多くが高齢者であったと報道もあり心が痛みます。亡くなられた方々のご冥福をお祈りしますとともに、罹災された方々へ、心よりお見舞い申しあげます。私たちひとりひとり、何ができるのかを考えていきたいものです。

JCPEAニューズレターでは、本センターのメンバーが、皆さまに、個々の関心や、センター外での活動も含め、メッセージをお届けします。今回の担当は梅崎です。

先日、石巻の福祉避難所で活動してきました。石巻市立病院が被災し、遊楽館というスポーツセンターで石巻市立病院の医師を含む医療職が頑張っていたところを、被災地外からの医療関係者が後方支援しているものです。私の所属する日本医療社会福祉協会(旧日本医療社会事業協会)も、早期から医療ソーシャルワーカーを派遣し、石巻市立病院のソーシャルワーカーをバックアップしています。

高齢者はストレスが身体化しやすく、うつ状態で一時的に判断能力が低下することも予想されるので、避難所退所後に、身体能力が低下して助けを呼べなくなる、詐欺や横領などの被害にあうこと等が懸念されました。また同居家族ともにうつ状態になり、攻撃的になると、家族とのいさかいが家族間暴力に発展する危険性も予感されました。様々な意味で、継続的に支援していくことが重要だと思いました。

さて私は、高齢者虐待の社会的要因に関心を持っているものですが、社会的な高齢者虐待とも言うべき介護負担からの心中事件、殺人事件について、警察庁による報道がありましたので、ご紹介します。山井厚労政務官は「介護者を支援する在宅福祉の充実が不十分。改善を検討」「高齢者虐待防止法は高齢者虐待の未然防止が最大の眼目」と、介護者支援を重点に見直しを行う考えを示したそうです。

「高齢者による殺人が急増」 
( 2011年01月17日  キャリアブレイン )

警察庁はこのほど、昨年の「刑法犯認知・検挙状況について」(暫定値)をまとめた。それによると高齢者による殺人が急増しており、中でも「介護・看病疲れ」が動機の2位になっていることが分かった。

まとめによると、昨年の殺人の検挙数は前年比2.5%減の1067件(14歳未満による殺人などを含む)で、戦後最少を更新。ただ検挙数を年齢別に見ると、14―19歳が13.3%減の39件、20―64歳が6.8%減の730件だったのに対し、65歳以上は22.3%増の175件だった。65歳以上による殺人の動機を見ると、「憤怒」が72件で最も多く、次いで「介護・看病疲れ」30件、「怨恨」28件、「生活困窮」6件と続いた。

「高齢者虐待防止法、介護者支援重点に見直し検討―山井厚労政務官 」
( 2010年04月14日 キャリアブレイン )

「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(高齢者虐待防止法)の見直しについて、厚生労働省の山井和則政務官は4月14日の衆院厚生労働委員会で、「介護者を支援する在宅福祉の充実が不十分。改善を検討している」と述べた。古屋範子氏(公明)の質問に答えた。

2006年4月施行の高齢者虐待防止法は、施行後3年をめどに、課題があれば見直しを行うことが規定されている。古屋氏の「在宅の介護者は心身共に限界。高齢者の短期受け入れ施設の拡充や、24時間体制の相談窓口設置などが必要」との指摘に対し、山井政務官は「高齢者虐待防止法は高齢者虐待の未然防止が最大の眼目。指摘された手法を含めて、さまざまな方法が考えられる」と、介護者支援を重点に見直しを行う考えを示した。

また、山井政務官は「今までの(在宅介護支援)サービスは使い勝手が良くなかった」と指摘。在宅の介護計画などを作成するケアマネジャーについて、「必要書類が多過ぎて現場で使える時間が少ない。改善を検討している」と述べた。施設の介護従事者の処遇改善については、「賃金を引き上げ、介護従事者が誇りを持って一生働けるようにすることが必要だと考えている」とした。

■医療従事者による虐待含むのは「大きな議論」

古屋氏は、同法にある介護者や介護施設従事者による虐待についての規定以外にも、医療機関や無届け施設従事者による虐待についての規定を含めるよう求めたが、山井政務官は「医療機関については大きな議論なので、政府としても考えている」と述べるにとどまった。

高齢者虐待の立ち入り調査について、古屋氏は「立ち入り調査要件に『高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている恐れ』が含まれているため、現場では立ち入り調査する判断に苦労している」とし、この要件を含まない児童虐待防止法と同程度の規定に改めるよう求めた。これに対し、山井政務官は「実態を把握する必要があるので議論していきたい」と答えた。

■「セルフネグレクト」は対象外

生きる気力を失った高齢者や認知症の高齢者による自己放任行為「セルフネグレクト」について、古屋氏は高齢者虐待の定義に新たに加える必要があると指摘。これに対し山井政務官は、「(「身体的虐待」など現状の定義と)同じ類型には入らないと考える。ただ、放置すべき問題ではない」と述べた。