日本高齢者虐待防止センター電話相談

2009年8月30日日曜日

日本高齢者虐待防止センターニューズレター No.7

みなさん、こんにちは。今日の衆議院選挙、政権交代という結果になりましたね。
さあ、実際に政策がどう変わるのでしょうか。
防止センターニュースNo7をお送りします。
No7には、荒木さんと須藤さんからエッセイを寄せていただきました。
ニューズレター、もう少し体裁を整えてお送りすればよいと思っているのですが、、、
ご勘弁ください。

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目次です
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*エッセイ
・「高齢者の性とケアに関する調査をして」 田園調布学園大学  荒木乳根子
・「虐待予防と家族支援」   社会福祉法人至誠学舎東京緑寿園ケアセンタ- 須藤 演子
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*高齢者虐待事例:新聞記事より
高齢者虐待:要介護施設従事者が3件 石巻では入所者の暖房切断--08年度 /宮城・
岡山の母親絞殺:「老老介護」孤立防げ 被告に7日判決 /岡山
73歳女性死亡:77歳夫を殺人容疑で逮捕 埼玉県警
夫、殺害を否認2009年07月07日
鶴岡の事件、初公判 弁護側「事故」
妻を殴り死なす さいたま・容疑者逮捕
「介護に疲れた」86歳父に大量の睡眠薬 51歳娘逮捕
県内高齢者虐待状況、家族らによる虐待件数は減少/神奈川
障害者虐待防止法関連: 与党障害者虐待防止プロジェクトチームに要望

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*地域包括支援センター
・島根県松江市の地域包括支援センターがゴミ屋敷クリーン・プロジェクトチームを結成;一人暮らしの高齢者や認知症高齢者、障害者のゴミ屋敷をクリーンにするという、社会福祉協議会の地域包括の試みを紹介したかったのですが、無断転載禁止の文字があったので断念しました。サイトをご案内します。http://www.sanin-chuo.co.jp/news/modules/news/article.php?storyid=513449004
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*与党障害者虐待防止

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*地域包括支援センターに関する記事
高齢者虐待防ぐ 地域包括支援センター

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*認知症モデル事業

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*その他のニューズ
・厚生労働省2009(平成21)年度介護職員処遇改善等臨時特定交付金の運営について
・ 高齢者のうつ病による自殺者はうつのない人の34倍―都老研が発表   
独身息子 母をみる 「在宅で」かなえたい
・〈深層群馬 総選挙の争点〉介護費用、生活を圧迫 利用者増え、負担一気
・高齢者虐待の相談・通報 昨年度、前年比99件増 早期発見のネットワークが効果
・入所者の暴行死事件 施設で聞き取り調査2009年08月25日
目次はここまでです

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ここからエッセイ、新聞記事等が始まります  ↓
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エッセイ

「高齢者の性とケアに関する調査をして」

田園調布学園大学 荒木乳根子

昨年度、ある助成金をもらい、川崎市の訪問介護員を主な対象に「訪問介護利用者の性行動に対する意識と対応」調査をしました。日本高齢者虐待防止学会のニューズレターでも触れましたが、今回は、また別の面から感じたことを書かせていただきます。

男性利用者からの性的働きかけを受けた経験がある人、199人が304事例について回答してくれましたが、性的働きかけで最も多いのは言葉によるもので、次いで身体的なタッチでした。気になったのは2~3割の訪問介護員が嫌悪感や不安感をもつようになり、2割近くが担当を辞めたいと思うようになっていたことです。

また、そのような経験をした訪問介護員の一部の人たちの対応も気になったところです。自由記述による回答に、「必要のない話はしない」、「ボディタッチはしない」、「なるべく接触しないためにベッドのまま食事介助をする」といった硬直したような対応が散見されました。自己防衛策かもしれませんが、自立支援には反することですし、不適切な対応と言わざるを得ません。

他者の目が届きにくい訪問介護では、訪問介護者自身が傷つくことも、利用者が不適切な扱いを受けることも、起こりやすい・・と考えさせられてしまいました。しかし、利用者の性的行動は人を求め、人の温もりを求める行動でもあります。その心理的内的欲求を汲み取って柔軟な対応をすることで、利用者も訪問介護員も傷つかない良好なケアに変えられる場合も多いのです。高齢者の性とケアについて教育や、事業所のサポート体制が必要だと痛感しました。

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「虐待予防と家族支援」

社会福祉法人 至誠学舎東京

緑寿園ケアセンタ-

須藤 演子

私どもの法人では、地域の近隣三市の行政と福祉の向上のために一緒に考え、学んでいく機会を30年以上継続している。その1つとして、高齢者虐待事例検討会を副田先生にご指導をお願いし三市の行政の方と地域包括の方と一緒に勉強するようになってはや、6年がたつ。

事例をつみ重ねるに従って、一般健診におけるメタボ対策や介護保険の予防が重視されるように、高齢者虐待に関しても、事後処理的な早期発見ではなく、一歩進んで予防的視点が大切なのではと感じている。

虐待発生のリスク要因として、介護者要因として、50歳以上の独身の息子が1人でみている、他の兄弟等と関係が希薄、精神障害がある、アルコ-ル依存、母子密着で共依存、几帳面で融通がきかない、適切な介護が分からない、できないなど。本人要因として、認知症がある、BPSDがある、排泄面の介助が必要、感謝の気持ちがうすく、マイペ-ス、今までの生活のなかで家族のつながりがうすく自由に生きてきた、など--、環境因子として、地域とのかかわりをほとんど持っていない、住居環境が狭い、呼び寄せ高齢者、特に訪問系のサ-ビスの必要性があるのに入っていないなど---、事例検討を通して見えてきたものを思いつくままにいくつかあげてみたが、今年度は具体的に分析していきたいと思っている。

このような虐待発生のリスク要因を複数もっている方を、地域で孤立しないように見守り、支援してくことが大切だと思う。もちろん虐待発生リスク要因は複数あっても、介護者・本人の耐性が強かったり、なんらかの支援があり、虐待にまで至らないケ-スもたくさんある。何がちがうのだろうか---

虐待されている方の8割は認知症があるといわれているが、虐待ケ-スへの対応は、地域で認知症の方を支えていくことと同じようだと思う。認知症の方を地域で支えていくためには、レスパイトケアという視点だけでなく、認知症の方と同様に介護者を支えていくことが大切なのと同じように、虐待に至らないうちから、介護者も支援対象者としてかかわり信頼関係を築きながら支えていく。家族・介護者をアセスメントしたり、ノンバ-バルなコミュニケ-ションや環境の変化から介護者のちょっとした変化に気づき対応していくことが予防的視点が大切だと思う。

また、虐待予防の視点では、行政や地域包括の方だけが対応すればよいというのではなく、各事業者が自分たちの行っているサ-ビス内容だけにとらわれずに、日頃の普段のかかわりの中で、高齢者だけでなくその家族・介護者へも目を向け支援していくことが大切だと思う。

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