日本高齢者虐待防止センター電話相談

2011年1月4日火曜日

日本高齢者虐待防止センター  ニューズレター No14

日本高齢者虐待防止センター  ニューズレター No14

新年、あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

皆様、お正月をいかがお過ごしでしょうか。
No14は、10年11月末にお送りする予定でしたが、発信が年を越してしまいました。隔月にお送りできるよう、努力したいと思います。
気になった記事を<その他>に入れていきましたので、No14は、<その他>中心の号になりました。
(AS)

目次は以下のとおりです。

<エッセイ> 1本
<New Information> 2本
<家庭内虐待> 記事 6本
<施設虐待> 記事 3本 
<その他> 記事 30本
(配信用ニューズレターとは異なり、本HPでは、エッセイをのぞき、すべてタイトルのみの掲示となっております)


情報の多くは、「市民福祉情報」よりいただいています。

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<エッセイ>
「施設入居者の傷ついた心と身体を最後まで守るのは誰か(2)」 小川孔美(埼玉県立大学)

<New Information> 
1 新規アルツハイマー治療薬2品目の承認を了承―医薬品第一部会
( 2010年11月24日 22:59 キャリアブレイン )
2 介護保険改正 厚生労働省案、介護保険法等の一部を改正する法律案(仮称)のポイント
3『平成21 年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果』

<家庭内虐待> 
1 高齢者虐待:09年度162件、「経済的」が倍増 県「景気悪化要因」 /神奈川
毎日新聞 2010年9月25日 地方版
2 兵庫県 高齢者虐待 最多698件 県内昨年度 大半は家庭内 目立つ介護負担 
(2010年10月27日  読売新聞)
3 殺人未遂:寝たきり母殺害未遂、50歳容疑者逮捕 搬送先で死亡--愛知・半田
毎日新聞 2010年10月26日 中部朝刊
4 寝たきり妻殺害:容疑の81歳を逮捕…千葉県警  毎日新聞 2010年11月7日 
5 介護してた長男傷害容疑で逮捕  八街、暴行?父親は死亡
2010年11月06日14時46分ちばとぴ
6 東京NEWS2010<2>葛飾の介護殺人 抱え込み「疲れた」2010年12月20日


<施設虐待> 
1 傷害致死:同室の93歳女性死なす 容疑で認知症の男逮捕--愛知・岡崎の特養ホーム
毎日jp 10/17
2 岡崎の特養暴行死:市と県が立ち入り 2人部屋に6人、法抵触 /愛知毎日新聞 2010年10月22日 地方版
3 認知症者 声届きにくく:県、7月の調査でつかめず(2010年12月4日  読売新聞)

<その他>
1 【長寿社会の虚実】第1部 111歳ミイラの周辺で(上) 「即身成仏になる」家族を苦しめた祖父の呪縛 (1/4ページ)  産経ニュース 2010.9.15 22:08
2 【長寿社会の虚実】第2部 地域・行政の限界(上) 「地縁、血縁には頼れない」 センサーが見守る (1/3ページ)  産経ニュース2010.9.18 21:01
3 『お泊まりデイサービス』の現状(下) 狙いは在宅介護の支援 費用負担などが課題
2010年9月30日  中日新聞
4 社説:成年後見10年 長命社会守る「切り札」に  毎日新聞 2010年9月30日 2時30分
5「91歳」男性遺体、長女を逮捕=年金700万円詐取容疑-大阪府警  時事ドッドコム
(2010/10/12-17:59)
6 ニュータウンも年をとる (上)世代交流  asahicom2010年10月08日
7「お泊まりデイ」への保険適用「貧困ビジネスが飛び付く」( 2010年10月18日 22:41 キャリアブレイン )
8「生活援助を介護保険から外さないで」―市民団体が集会( 2010年08月05日 20:39 キャリアブレイン )
9 高齢者はいま…:つなげ地域の輪/下 鹿沼みまもり隊 /栃木
◇子育て世代とも連帯を 月1の訪問と報告義務  毎日jp
10 孤独死:公営団地で1191人 65歳以上は7割超  
毎日新聞 2010年10月27日 2時36分(
11『お泊まりデイサービス』の現状(上) 独居、低所得、認知症あり 生活困難で宿泊続く
中日新聞  2010年9月23日
12  介護者支援の輪広がる  asahi.com 2010年10月20日
13 白骨化遺体:市営住宅に 居住女性か--岐阜 毎日新聞 2010年10月19日 中部朝刊
14 ネット調査:全国で相次ぐ高齢者の不明 「国の制度機能せず」47%  毎日新聞 2010年10月21日 東京朝刊
15 一人暮らし高齢者に大学生が付き添い買い物 品川区がモデル事業 毎日jp2010.10.19 19:11
16 高齢者の見守り センターに専属コーディネーター 池尻、北沢など10カ所に配置
東京新聞2010年10月18日
17 注目集まる市民後見人 住民同士で支えるセーフティーネット 質向上へ行政の支援急務
東京新聞 2010年10月20日
18 高齢者介護向けのロボット開発進む。子や孫が遠隔操作の「テレノイドR1」や対話ロボも
東京IT新聞 記事詳細 150号 2010年10月26日 12面「特集:PICK UP! 」  
19 「団塊の世代こそ互助の力の発揮を」―介護保険サミット分科会( 2010年10月22日 18:18 キャリアブレイン )
20 増える首長の成年後見制度申し立て  asahi.com 埼玉2010年10月27日
21 認知症高齢者5人に1人財産被害  NHK10月27日 4時51分
22 単身高齢者の個人情報、民生委員に提供は自治体の約半数( 2010年11月01日 16:51 キャリアブレイン )
23 高齢者虐待防止講演会~講談から認知症介護と高齢者虐待を考える~
24 介護保険:「要支援」2割負担検討 生活援助の縮小も 毎日新聞 2010年10月28日 東京朝刊
25 有料老人ホーム・高齢者住宅を運営するオリックス・リビング株式会社による「介護に関する意識調査」結果; http://www.orixliving.jp/company/pdf/pressinfo_101029.pdf
26 第37回社会保障審議会介護保険部会資料http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000x93i.html
27 介護保険見直しへ意見書 「軽度」生活援助縮小も 「重度」対象者に手厚く
中日新聞 2010年12月2日
28介護保険10年  (2010年11月30日  読売新聞)
29 家族に頼れる時代の終わり 「孤族の国」 朝日新聞2010年12月26日
30 みえ (5)熊野の母親遺棄 高齢者確認へ積極策必要 (2010年12月25日  読売新聞)



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<エッセイ>

「施設入居者の傷ついた心と身体を最後まで守るのは誰か(2)」

小川孔美(埼玉県立大学)

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)で高齢者虐待があった。

前号では、入居者の訴えが管理者に伝えられるまでの、7時間にわたる「時間の空白」の中で、訴えを受け止めた職員の心の中でどのような葛藤があったかをお伝えした。

今回も前号に引き続き、介護老人福祉施設であった高齢者虐待について、「施設を利用する家族の心」を中心に第2報としてお伝えしたい。

施設内で起こった高齢者虐待の事実を、情報公開は義務であるとしてこの施設は開示に徹したことは、既に前号で述べた。

高齢者虐待をしていた職員から暴力を受けたと思われる利用者の家族だけではなく、この施設の入居者と入居者の家族すべてに、「施設内における虐待事件の発生について」の報告とお詫びの文書を送付した。そこには、事態の説明責任を果たすべく、不明な点、不安な点について相談可能な窓口を設置(電話相談)したことも書かれてあった。

○この仕事をしている方達は、プロなんだから、このような事があってはいけないと思う

という意見も当然聞かれたが、施設を利用する家族からの反応は、以下のように概ね施設の対応、職員に好意的だった。

○「このような仕事についている職員は、本当に大変だと思う。先日、面会に行った時も、こまめに訪室し、よくやってくれていた。感心している。

○家で看ていた時(入所前)、私も言葉が荒くなったり、手を出しそうになったこともあった。だから、今回虐待を行ってしまった職員の気持ちもわからなくはない。

○虐待をしてしまった職員のこの先が心配だ。これを機にしっかり立ち直ってくれればよいが。

○介護中に強い抵抗があったことについては、面会に行ったときの様子からも想像できる。それだけではなく、現在では、便いじりをしたり、人に噛み付こうとするまでの症状が出ていることは、初めて知った。現状を知ることができてよかった。

○認知症だから、もう忘れているでしょう。過ぎたことだから、わざわざ問題にするつもりはない。

○今後とも、施設によろしくお願いしたいと思っている。

施設を利用する家族は、施設職員に要介護者を委ねている。

要介護者が入所するまで、様々な葛藤や困難を乗り越えながら介護をし続け、家族にとってすでに限界だからこそ入所に至っている場合や、家では他に要介護者がおり、とても二人とも看られる状態ではないため入所に至る場合、また要介護者を看る介護者不在など、世帯、家族の多様性に伴い、あらゆる理由とともに利用者の入所がある。

家族にとって、要介護者を施設に委ねることができるか、入所できない状態が続くかは、時には家族としての今を左右するほど重大なことでもある。

要介護者を看ることができないから施設に預け、職員らに、要介護者がどんなに大変な状況でも看てもらっているのだという思いが、時には負い目となり感謝の言葉となる。

また「介護」の大変さ、辛さをわかっている家族は、自身の「介護の記憶」というフィルターをとおして、虐待した職員の気持ちや苦痛をも理解しようとする側面があることを、家族の言葉から伺う事が出来る。さらには、利用者本人の認知症症状の程度によって、「記憶」が曖昧になればなるほど、「虐待」の事実はかき消されやすくなる。

虐待を受けた入居者の家族は、施設に今後のことを引き続き託しながらも、以下の言葉を述べている。

「(職員から)虐待を受けていた時、本人はどのような様子だったかを知りたいと思います。その様子から、本人の心の声を少しでも代弁できたらと思うのです。それが、家族の役目だと思うし、そこを守らなければ、誰も本人を守るものがいなくなってしまうので。」

「施設を利用する家族の心」が貴方に届いただろうか。
「施設入居者の傷ついた心と身体を最後まで守るのは誰か」私たちは、もう一度問い直さなければならない。

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