日本高齢者虐待防止センター電話相談

2010年1月21日木曜日

日本高齢者虐待防止センターニューズレター No.9

みなさん、今年もよろしくお願いいたします!

昨年1121日、毎日新聞の朝刊一面に、「高齢者虐待12%」というヘッドラインが載りました。
H20年度高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」の発表です(関連情報の3)にUPしています)

以下と同じものを添付ファイルでもお送りします。ファイルのほうには写真が入っています。


目次
<エッセイ>
1:「養護者支援と平等思想」       浅井 正行(防止センター相談員)
2:「パナマの旅」            松丸真知子(防止センター事務局次長) 


<新聞記事>
1)尾花沢の殺人:母殺害で長男に懲役5年を求刑 /山形
2)介護疲れの無理心中か…東京・稲城の集合住宅
3)ここがポイント 介護担う家族のケア
4)ひたちなかの老妻絞殺:「相談すべきだった」 5分間、異例の説諭--判決 /茨城
 ◇家族「温かく迎えたい」
5)繰り返された嘱託殺人の悲劇、問われる地域の力
6)高齢者への虐待 心理・経済面も
7)佐賀県「高齢者虐待しそうになった」自宅介護の4人に1人
8)介護殺人、心中400件 制度10年、やまぬ悲劇 
9)<埋もれる孤独>上 負担重すぎ施設断念
10)<介護殺人・心中>認知症の対応に苦慮(中日新聞)
11)高齢者見守りサービス:新聞受け3日分で連絡 世田谷区と販売組合が協定 /東京
12[社説]高齢者虐待 必要な介護者支援の視点(山陽新聞)
13) 老人ホーム入居、4割が経済的に困難 26年後、「施設必要」136万人増政投銀試算
14) 殺人:66歳介護に疲れ、母親殺害の疑い 警視庁が逮捕
15)【ゆうゆうLife】地域包括支援センターを知っていますか?(上)
産経ニュース 2009.5.18 08:14

<関連情報> 
1) 業界ニュース : ケアマネの適正給与で三者三様の回答――在宅協セミナー
2)隣家の介護殺人に気づかず   ケアマネジャーとしての“悔悟”
3) 厚生労働省老健局高齢者支援課 2009(平成20)年度高齢者虐待の防止、
高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果
4) 埼玉県 高齢者虐待 増加の一途  6年前の10倍「氷山の一角」
08年度674件 介護疲れなども背景  防止法施行で相談増
5】北海道 高齢者虐待が年々増加 道報告 20091210
7)神奈川 民生委員不足
8) うつ状態の家族介護者は死亡リスクが6.9――日本福祉大学調査
CARE MANAGEMENT  ONLINE

以上の出典:メイル・ミニコミ「市民福祉情報」、介護の学校WEB 等

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<エッセイ1>
「養護者支援と平等思想」
               浅井 正行

 高齢者虐待防止法は、福祉法的な性格を持った法律だ。この法律の優れたところは、養護者支援をその中に盛り込んだことだろう。虐待者を悪人・犯罪人扱いし、懲罰を与えるのではなく、虐待を引き起こす要因への働きかけを念頭に、虐待者が虐待行為をしないで済むように支援していこうというものである。虐待を家族全体の問題として捉え、バーンアウト寸前の家族介護者へ支援を実施し、身体的負担・精神的負担の軽減を図ることで高齢者を守っていくということが、この防止法の大きな目的なのだ。そして、それが他国に誇れるところでもある。

 話がいきなり飛躍して恐縮なのだが、私は虐待防止センターの専門電話相談員、大学教員の傍ら、僧侶として修業をしている。一昨年の8月には、身延山に35日間籠もり、5キロ以上痩せてしまうほどの修行も行ってきた。そうした私のバックグラウンドが影響しているのだろうか。今、仏教の根本の教えである平等思想の重要性を再認識しているところだ。平等思想はまた、仏教でいうこところの慈悲心が出発点となっている。

平たく言えば、相手の身になって、「痛み」の分かる人間になるということである。こうした平等思想・慈悲心の観点から言えば、高齢者虐待においては、「被虐待者」「虐待者」双方の同時救済(援助)が最大の目的となる。被虐待者の苦悩を理解した上で、適切な支援を行うと共に、虐待者へは罪の自覚を促しつつ、介護ストレス等に配慮した援助を提供することが大切なのである。

 「高齢者がすべて善で、虐待者がすべて悪」と単純化することなく、双方へのいたわりの心を抱きつつ、「全員救済」の気持ちで、高齢者虐待防止に取り組むことが重要である。そう考える今日この頃である。

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<エッセイ2> 
 「パナマの旅 」   
 松丸真知子 
         
パナマというと、私は小学校の社会の教科書で見たパナマ運河が何故か強く印象に残っていて、まさか本物を見ることができるとは夢にも思っていませんでしたが、昨年6月にパナマの友人に会いに行き、まさかが現実になりました。

パナマという国は日本では運河以外あまり知られていません。人口わずか350万人の小国家ですが、地理的重要性から中南米における貿易、人の移動、国際政治に大きな役割を果たしてきているそうです。最近はパナマ運河の拡張に伴い、飛行場も拡大整備もされ、建設ブームとクルーズ人気による観光産業の拡大が中南米一の経済成長を引っ張ってきている国だそうです。

街は建築工事現場だらけ、夕方になると車のラッシュはどこの国でも同じですが、さっきまで両方向だった大きな道路が突然警官の誘導で一方通行に早変わりし、たくさんの警察官が交通整理に出て車の往来を巧みに?さばいていたのには驚きました。

 23日の旅でしたが、友人のエルサが観光案内をしてくれて、後は所謂ガールズトークといった話に花を咲かせていましたが、お姑さんの介護の話題になり、パナマの高齢者ケアの話は興味深かったのでご紹介しようと思います。

 エルサのご主人は60歳前後で、お母様はご主人のお姉さまと近所に暮らしています。80代で、認知症もあり、ほぼ全介助が必要な方ですが、日中は同居の娘さんが介護をしています。エルサのご主人は毎日朝、5時に母親の家に行き、8時までに朝食まで終わらせて、仕事に行きます。仕事の後も夜の部があり、母親の就寝までして帰宅するといった生活がもう何年も続いているとのことでした。
 
私はその話を聞いて、「重い介護負担からの虐待…」と、つい思ってしまい、「施設に入ることは考えないの?」と聞くと、パナマでは家族がいるのに施設に入ったら、家族間で何か問題があるのではないかと思われるからそれはできないのだそうです。
私は介護の話を深刻にとらえて聞いていたのですが、エルサの表情はあくまで明るく、「夫は母親のもとへ毎日行って、世話をしたり話をしたりするのを喜んでしているし、夜帰ってきて今日はどうだったかユーモアも交えて色々話してくれる。」というのです。

そして12月にエルサと電話で話した時、「お姑さんは11月に亡くなり、ご主人は深い悲しみの中にいたけれど立ち直りつつある。」と言っていました。「お母様は最後まで幸せで天に召されたと確信しているわ。」と私は言いました。
私は夫の仕事の関係でラテンアメリカの国の人達と会う機会が多くあり、その明るさと心の暖かさにたくさんエネルギーをもらっていましたし、彼らは家族の繋がりが濃く、家族を誇りに思っていることは知っていましたが、最後の看取りまで明るく暖かい彼らに驚きました。

東洋では儒教の影響で親を大切にするといった文化があることは言われますが、地球の反対側でも家族を大切にする文化があることに、まだまだ人間は捨てたものではないと安心します。
あくまでも、私の知り得た事例だけですが・・・・

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